寒くなってくると、温かいスープや鍋料理、湯気の立つお味噌汁などが恋しくなります。
手足の冷えが気になるときには、「食べるものからも体をいたわりたい」と思うこともあるかもしれません。
昔から、食べ物にはそれぞれ性質があると考えられ、薬膳などでは、季節や体調に合わせて食材を選んできました。
一方で、現代の栄養学では、特定の食材だけで体の冷えを改善するという考え方ではなく、エネルギーやたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどを含む、バランスのよい食事が基本になります。
そこでこの記事では、
- 昔から温める食材として親しまれてきたもの
- 生姜や八角などの香辛料
- 食材に含まれる主な栄養素
- その栄養素が体の中でどんな働きをするのか
- エネルギー代謝と体の熱
- 寒い季節の食卓への取り入れ方
という視点から、食べることと「温める」ことについて考えてみます。
「体を温める食べ物」はどう考えればいい?
「体を温める食べ物」と聞くと、生姜や唐辛子、根菜などを思い浮かべるかもしれません。
でも、ここで大切なのは、「この食材を食べれば冷えがなくなる」と考えないこと。
温かい料理を食べることによる温度の心地よさもあれば、香辛料の辛味や香りを楽しむこともあります。
そして、体が活動するためには、食事からエネルギーをとることも欠かせません。
体の中では、糖質・脂質・たんぱく質などを利用してエネルギーを生み出す「エネルギー代謝」が行われています。その過程では、熱も生まれます。
だからこそ、「温める食材」だけを見るのではなく、エネルギーをつくるために必要な栄養素や、体をつくる材料となる栄養素も含めて考えてみることが大切です。
薬膳でいう「温める」という考え方と、栄養学から見た「エネルギーをつくる」「体をつくる」という考え方。
この二つを分けて考えてみると、食材の選び方も少し見えやすくなります。
生姜|昔から親しまれてきた「温める」食材
生姜は、寒い季節の食卓でおなじみの食材です。
すりおろして薬味にしたり、スープや鍋料理に加えたり、生姜湯にしたり。
少量でも風味がしっかりするので、毎日の料理に取り入れやすいのも魅力です。
生姜特有の辛味には、ジンゲロールなどの成分が含まれています。
生の生姜に含まれるジンゲロールは、加熱や乾燥によって一部がショウガオールなどに変化することが知られています。
そのため、生の生姜と、加熱した生姜や乾燥生姜では、成分の構成にも違いがあります。
薬膳では、生姜は体を温める食材として昔から使われてきました。
寒い日に生姜を加えた温かいスープや飲み物を楽しむのは、こうした食文化にもつながっています。
生姜はこんなふうに楽しめます
- 生姜湯にする
- 味噌汁やスープに加える
- 鍋料理の薬味にする
- 肉や魚の料理に使う
- 紅茶などの温かい飲み物に加える
「温めるためにたくさん食べる」のではなく、香りや辛味を楽しみながら、少量を料理に取り入れるくらいから始めてもよさそうです。
八角|ちょっと意外な「温める」スパイス
生姜ほど一般的ではありませんが、寒い季節の食卓に取り入れてみたい香辛料があります。
それが**八角(スターアニス)**です。
八角は、中国料理などで使われる星形の香辛料。
甘さを感じるような独特の香りと、少しスパイシーな風味があります。
八角にはアネトールなどの芳香成分が含まれており、この成分が特徴的な香りをつくっています。
薬膳では、八角も体を温める性質を持つ香辛料のひとつとして扱われてきました。
手足など末端の冷えが気になるときに使われることもありますが、これは薬膳の考え方として捉えておくとよいでしょう。
八角は香りが強いので、たくさん使う必要はありません。
煮込み料理やスープに少量加えるだけでも、料理全体に深みのある香りが広がります。
チャイなどのスパイスを使った飲み物に加えて、香りを楽しむのもよさそうです。
生姜と八角、同じ「温める」でも楽しみ方が違う
生姜は、薬味や飲み物など、日常の料理に取り入れやすい食材。
八角は、料理に少量加えて香りを楽しむスパイス。
どちらも昔から温める食材として使われてきましたが、香りや使い方にはそれぞれ違った魅力があります。
「冷え対策のために食べる」だけではなく、香りや味わいを楽しむ食材として取り入れるのも、味覚から季節を感じる方法のひとつです。
根菜や冬野菜|温かい料理に取り入れたい食材
寒い季節には、根菜を使った煮物やスープ、鍋料理などがおいしく感じられます。
温かい料理にすると、食べるときの心地よさも楽しめます。
にんじん
にんじんには、β-カロテンが豊富に含まれています。
β-カロテンは体内でビタミンAに変わり、目や皮膚、粘膜の健康維持などに関わります。
炒め物、煮物、スープなど、いろいろな料理に使いやすいのも魅力です。
かぼちゃ
かぼちゃにはβ-カロテンのほか、ビタミンEなども含まれています。
β-カロテンは体内でビタミンAとして働き、ビタミンEは抗酸化作用を持つ栄養素です。
煮物だけでなく、スープや蒸し料理にしてもおいしくいただけます。
れんこん
れんこんには、ビタミンCや食物繊維などが含まれています。
ビタミンCはコラーゲンの生成に関わり、鉄の吸収を助ける働きもあります。
シャキシャキした食感を楽しめるので、煮物だけでなく、きんぴらや炒め物にも。
ごぼう
ごぼうは食物繊維を多く含む野菜のひとつです。
食物繊維は、腸内環境や排便を整える働きに関わります。
温かいきんぴらや煮物、汁物などに取り入れると、寒い季節にも食べやすくなります。
ねぎ
ねぎには独特の香りや辛味があり、薬味として料理の風味を引き立ててくれます。
味噌汁や鍋、スープなど、温かい料理との相性もよい食材です。
発酵食品も、毎日の食卓に
味噌や納豆などの発酵食品も、日本の食卓になじみの深い食品です。
たとえば味噌汁なら、根菜やきのこ、豆腐などを組み合わせることで、一杯の中にいろいろな食材を取り入れることができます。
納豆なら、ごはんや卵などと組み合わせることもできます。
発酵食品だから「体が温まる」と単純に考えるのではなく、普段の食事に取り入れやすい食品のひとつとして考えてみるとよさそうです。
たんぱく質だけでなく、エネルギー代謝を支える栄養素も
「体を温める食材」を探していると、野菜や香辛料ばかりに目が向いてしまうことがあります。
でも、体が熱を生み出すためには、食事から得たエネルギーを利用するエネルギー代謝が必要です。
そのためには、たんぱく質だけでなく、糖質や脂質、それらの代謝を支えるビタミンB群など、さまざまな栄養素が関わっています。
たんぱく質は、筋肉や皮膚、髪、内臓など、体のさまざまな組織をつくる材料になります。
そしてビタミンB群は、糖質・脂質・たんぱく質からエネルギーを生み出す代謝に関わっています。
たとえば、
- ビタミンB1 → 糖質のエネルギー代謝に関わる
- ビタミンB2 → 脂質などのエネルギー代謝に関わる
- ナイアシン → 糖質・脂質・たんぱく質の代謝に関わる
- ビタミンB6 → たんぱく質の代謝に関わる
など、それぞれ役割があります。
肉、魚、卵、大豆製品、穀類、野菜など、いろいろな食品を組み合わせることで、さまざまな栄養素を取り入れやすくなります。
たとえば、
- 魚と根菜の鍋
- 鶏肉と野菜のスープ
- 豆腐と野菜の味噌汁
- 卵を加えた温かい雑炊
など。
「温める食材」と「エネルギーをつくるための栄養」「体をつくるための栄養」を一緒に考えると、食事の幅が広がります。
食材に含まれる栄養素は、体の中でどんな働きをする?
ここで、寒い季節の食事に取り入れやすい食材に含まれる栄養素を、もう少し詳しく見てみましょう。
β-カロテン
にんじんやかぼちゃなどに含まれるβ-カロテンは、体内でビタミンAに変わります。
ビタミンAは、目や皮膚、粘膜の健康維持などに関わる栄養素です。
ビタミンC
れんこんなどにも含まれるビタミンCは、コラーゲンの生成や、鉄の吸収を助ける働きに関わっています。
また、抗酸化作用を持つ栄養素でもあります。
ビタミンE
かぼちゃなどに含まれるビタミンEは、抗酸化作用を持ち、細胞を酸化ストレスから守る働きに関わります。
食物繊維
ごぼうなどに多く含まれる食物繊維は、腸内環境を整えたり、便通を保ったりする働きがあります。
野菜、豆類、きのこ、海藻など、さまざまな食品から取り入れられます。
たんぱく質
肉、魚、卵、大豆製品などに含まれるたんぱく質は、筋肉、皮膚、髪、内臓など、体を構成するさまざまな組織の材料になります。
毎日の体づくりに欠かせない栄養素です。
鉄
鉄は、赤血球の中にあるヘモグロビンをつくる材料になります。
ヘモグロビンは、血液を通して酸素を全身へ運ぶ役割を担っています。
鉄は、赤身の肉や魚、レバー、大豆製品、貝類、緑の葉野菜など、さまざまな食品から摂取できます。
ただし、「冷えを感じる=鉄が不足している」と決めつけることはできません。
気になる症状がある場合は、食事だけで判断せず、必要に応じて専門家に相談することも大切です。
寒い日に楽しみたい温かい飲み物
食べ物だけでなく、温かい飲み物も寒い季節の楽しみのひとつです。
白湯
シンプルですが、温かい飲み物をゆっくり味わう時間をつくることができます。
生姜湯
生姜の辛味と香りを楽しみながら、温かい飲み物をいただけます。
ほうじ茶
香ばしい香りが特徴で、食事と一緒にも楽しみやすいお茶です。
スパイスを使った飲み物
シナモンや八角などを使ったチャイのような飲み物なら、味だけでなくスパイスの香りも楽しめます。
温かい飲み物を手に持ったときの手のひらの温かさ、湯気、香り。
飲み物ひとつでも、いくつもの感覚を楽しめます。
「体を温める食材」だけに偏らないことも大切
ここはとても大切なところです。
生姜がよいからと生姜ばかり食べたり、八角が温めるからとたくさん使ったりする必要はありません。
特定の食品だけに偏るのではなく、主食・主菜・副菜を組み合わせ、さまざまな食品から栄養をとることが基本です。
「体を温める食材」は、毎日の食事を考えるときのひとつのヒント。
それだけを目的にするのではなく、
温かい料理を楽しむこと。
季節の食材を味わうこと。
体をつくるための栄養をとること。
この3つを一緒に考えてみると、食事との付き合い方が無理のないものになりそうです。
食べることも、五感で味わってみる
温かい料理には、味だけではない楽しみがあります。
鍋から立ちのぼる湯気を見る。
生姜や八角、ねぎの香りを感じる。
温かいスープを口に含む。
湯気の立つマグカップを手で包む。
そんな小さな感覚を意識してみると、食事は単に栄養をとるだけの時間ではなくなります。
寒い季節だからこそ、温かいものをゆっくり味わう。
それも、自分の体をいたわる時間のひとつなのかもしれません。
食べ物から温めることに加えて、できること
食事から体をいたわる方法のほかにも、寒い季節にはさまざまな「温める」方法があります。
衣類で体を包んだり、湯船にゆっくり浸かったり、温かいものに触れたり。
食べることと、触れること。
どちらも、日々の暮らしの中で温もりを感じる方法です。
食べ物から、触れることから。
その日の自分に合う「温める時間」を見つけてみるのもよさそうです。
